ニッコリと笑いその綺麗な指で花びらに触れる。その姿はとても尊いものに触れるような慎重で慈愛に満ちた触れ方だった。
「うんうん、元気になってるみたいでよかった」
「……もしかして、この花はあなたが?」
なんだか元気だと思ったらこの人が世話をしてくれていたんだろうか。ん?でもこの人って余興のために招かれた人だと思ったんだけど…そんな人が花の世話ってどうなんだろうか。
納得がいかずに内心で首を傾げるがそんなわたしに気づく様子もなく「まぁそんな感じ」とこの人の返事は軽い。
「俺ね、旅してあちこちふらふらしてるんだけどちょっと懐が心もとなくなってね。ちょうどいいから今日の余興に飛び入り参加させてもらったんだ。おかげでうはうは」
「そう」
この人、旅人なんだ。言われてみればこれだけ見目がいいのに身なりはそんなに高価ってわけでもなく普通というか。言い方はよくないけどちょっと古い。でも清潔感はあって着古しているというのがしっくりくるかも。


