それは薔薇の魔法~番外編~




ふう、と一つため息をこぼすと同時に主催者たる一応の父親が何かの余興でもするのか話をしていたけど特に興味もなくわたしは視線を窓の外に向けた。こんなに近くにあるのにそれが叶わないとかなんたる地獄…自由が、欲しいなぁ。


ぼんやりとしているところに歌声が聞こえた。


初めて聞くその歌はこの国のものではないのか詩はあっても何を言っているのかはわからなかった。ただ、意味は分からなくても思わず聞き入ってしまうぐらいに惚れ惚れするもので。


誰が歌っているのかと視線を彷徨わせるとちょうど部屋の真ん中、見覚えのない男性と目が合った。濡れたような漆黒の髪に白磁の肌、そして垂れ目がちな瞳は深い森のような緑色を持ったその人はどこまでものびやかに音を紡いでいく。


わたしのまわりにいた人の瞳は綺麗だけど石やよくて宝石のような無機質なものだった。でも自由に歌うその人の瞳は宝石のようでありながら生きた輝きを宿した人だった。


時間も忘れて見入っていると余韻を残して声が消える。夢の時間が終わってしまったような残念な気持ちになるのを自覚してなんだか不思議に思った。


わあっと興奮した歓喜の声がホールに響きあっという間に男性が様々な人達に囲まれる。わたしなら面倒で耐えられないけどどうやら男性の方は慣れているのか口元に笑みを浮かべながらうまく会話をしていた。


というかその周りの人の中にあの好色色ボケ変態じじいまでいるんだけど。歌もすごかったけど見目が麗しいせいかあのじじいに目をつけられるなんてご愁傷様である。嫁がされるわたしもだけどな!


あのじじいに関しては性別問わず綺麗なものを愛でて自分の手で汚すことが好きな変態下種野郎であるとこの時間内に情報は手に入れた。こんな情報がほしかったわけではないんだけど…事前に知れてよかったと前向きに考えよう。