小さな女の子が昔から憧れるお姫様。子どもの時からみんなに愛され、可愛がられ、例え不憫な目に合っていても最後は必ず最愛の人と結ばれて幸せになる。


物心つく前の少女なら一度はそのお姫様みたいに素敵な王子様と出会って恋をして幸せな結婚をするのだと言うだろう。だがしかし、



「ありえないわ…」



そう、現実世界において物語のようなメープルシロップ並みの甘さのある結婚なんてないのである。むしろしょっぱい、苦い辛い酸っぱいほうが何倍もあると思う。


そしてまず前提としてわたしは王族でもお姫様でもない、ただの一般人だ。貴族の一員ではあるので普通とも言えないかもしれないけど、そもそもの話わたしはとある貴族の阿呆坊ちゃんが手を付けて生ませた侍女の娘で。


その後母はほぼ無理矢理に愛人にされわたしが正妻の息子の継承権には響かず、他家との繋がりを作る駒として使える女だったからこの家に住まわされているだけであり平民である母親の手で育てられたのだからその価値観たるや完全に庶民様と同じである。


まぁ使える云々はさておき正妻がこちらを冷ややかに見るのは当たり前で、わたしと母とを離れの小さい小部屋に押し込んだから些細な嫌がらせさえ無視していれば平穏な日々だったのでこちらとしては不満もなかったのだけど。