それから長いような短いような時間が過ぎた。ローズが少しずつ笑顔を見せるようになったり、マリーたちのことを受け止めて悲しみとともに優しい記憶を思い出せるようになったり、ゼファーレンから魔法を習いジルバさんのように植物に癒しの魔法をかけることで庭師として働きたいと言ったり。


シリルはローズのことを覚えていたのかは定かではないがこれまで以上に王子であることを自覚して振る舞うようになり、貴族が通う学校に行ったり、卒業後は少しずつ国王としての仕事や視察をしたり。


2人ともそれぞれが自分にできることをして立派に成長してくれた。自慢の子どもたちだ。


そして意図せずに2人は出会い、恋に落ちて、いろいろあったものの明日という日を迎えることができた。


今ここにマリーたちがいたらどうなっていたのだろう。多分ジルバさんは反対してマリーはそんなジルバさんをいつもの調子でど突き、でも結局はローズの幸せのためにと(主にジルバさんが)泣く泣く了承するのだろう。


予想以上に簡単に想像できるあったかもしれない未来に思わず笑みがこぼれる。



「どうかしたのか?シェイリー」


「ふふ、いいえ。なんでもないのよアラン」



ただ、あの2人が幸せになれるといいと考えていただけ、と言うとアランは「あの2人なら大丈夫だろう」と言って笑った。



「そうね」



私たちの自慢の子どもたちですもの、きっとあの2人は誰よりも幸せであたたかい家庭を築けるわ。


私も笑みを返し、かすかな寂しさとそれ以上の幸福に感謝して、アランと心ゆくまで思い出に浸った。