国母として生きる私がただ1人の孤児となってしまった子を引き取ることは他の孤児たちから見たらとてもずるいことかもしれない。贔屓だと言われても仕方がないかもしれない。


でもあんな姿を見て、孤児院に行くように言うなんてしたくはなかった。深く傷ついて今にも壊れてしまいそうな危ういローズちゃんには寄り添って抱きしめて、生きた温かさを教える人が必要だ。


それが私である必要もないかもしれないが、彼女は私が初めて身分の有無に関わらずに唯一の友人だと思ったかけがえのない人とアランの無二の友との間の大切な宝物だ。他の人ではなく私があの2人の代わりに幼い彼女が成長するまで守りたい。



「反対するかしら?」


「…国王としてはな。だが1人のあいつの友として、私も彼女を他の人に任せることはしたくない」



ただローズちゃんは未熟とはいえジルバさんと同じ魔法が使える。成長にもよるがジルバさんほどの強い魔法ではなくともその恩恵を欲しがる人間はごまんといるだろう。


そういう者たちから守るためにも極秘に彼女を引き取ることにして、シリルにもローズちゃんをこの城で預かることを知らせないことにした。


傷ついたローズちゃんはまだ確定ではないが強いショックで一部の記憶が失われているかもしれない。それなのにシリルに会わせても今は負担になるだろうし、ローズちゃんの姿にシリルも衝撃を受けるかもしれない。


大人になって覚えていたら2人を引き合わせてもいいが、今は幼い子どもたちの心を守るためにもこのことは私とアラン、そして事情を知るわずかな人との間のこととしておくことにした。