黒の衣装を身にまとい、珍しく強いお酒を煽っているアランの隣にそっと寄り添う。言葉はいらなかった。きっと、お互い同じことを思っていただろうから。


いえ、私よりも長い時間を得難い友として心の支えとしていたアランの方が心に訴えるものは多いだろう。短い間一緒にいただけなのにこんなにも悲しいのならアランの悲しみはどれほどなのか…私には想像しかできない。


ふと窓の方を見ると鉛色の雲が雫を落とした。窓がぼやけて見えるのは空から降る雨のせいかしら。それとも私からこぼれるもののせいなのかしら…



その知らせがもたらされたのはジルバさんたちが城を出た数時間後、顔色を真っ青にさせた宰相であるゼファーレンがアランの執務室に倒れこむように入ってきた。


私はたまたまアランのところに訪れていただけだが、いつも冷静沈着で滅多なことにも動じないゼファーレンの姿を見て驚くと同時に嫌な予感がして部屋を出るという選択肢を頭から弾く。


そしてその口から聞かされたのはジルバさんとマリーの死だった。