そんな中この城に立ち寄り薔薇園を覗いたらなんだか薔薇に生気がないように見える。確かに綺麗は綺麗だが、まるで作り物めいていて生きているような艶がない。


旅人は言った。そんなの勿体ない!せっかく俺がここにいるのに!こんな薔薇はどこでも見られる、俺が見たいのは世界で一番美しい薔薇だ!


と、その一心で王に謁見を望み、自らの魔法でここにある薔薇の生命力を上げようとしたわけだ。はっきり言って考えなしにもほどがあるというか、阿呆である。


だがその純粋に薔薇の力になりたいという心が気に入ったらしく、アランは父である王にもその話をして許可をとり、王太子の客人ということで旅人を城に招き本人が望むように薔薇の世話をさせた。


その力と威力は一目瞭然だった。一応念のためとおかしなことをしないようにという建前でその実8割がた興味で旅人が魔法を使うところを見せてもらったが、それはとても美しかった。


薔薇だけでなくその魔法を乗せた歌声は聞いていた人々も魅了した。心の底からあふれるような抗いがたい熱に薔薇は艶やかに咲き誇り、人は陶酔とした面持ちで聞き惚れていた。


なるほど、確かに魅力的でとてつもなく危険である。魔法だけでなく本人の容姿も相まってそれはもう超絶に危険だった。第一級危険物指定の代物だった。


1つのところに留まらずにいろいろな国を旅している理由も納得である。一か所に留まっていればどこぞできっとかどわかされていただろう。と、アランはものすごく納得したらしい。