それは薔薇の魔法~番外編~




私が来る前、旅人と称してこの城に1人の男性が訪れた。この城の薔薇園はある程度開放されているため旅人もそれを見に来たらしい。


だが薔薇園をみた旅人は王にお願いしたいことがあるからと謁見を望んだ。はっきり言ってそれだけでとんだ不敬である。


一旅人に対してそんなことをすれば他もしなければならない。旅人だけを特別扱いにするわけにはいかない、と断ったが旅人は諦められない様子だった。


王もそれを気にしていたが会うわけにもいかず、その代わり興味を持った当時王太子だったアランが身分を隠して旅人に会いに行きその理由を聞いたとか。


旅人は普通の旅人だった。ただ普通の旅人とは違い、特別で珍しい魔法を使うことができた。


それが『癒しの力』であり『生命の力』


その恩恵に預かれば生き物は心身共に癒され、どんな傷も治すことができる。女性が永遠に夢見るであろう若々しい美貌を保つことも、人が喉から手が出るほど欲しがる寿命を延ばすことも。


あまりにも魅力的であまりにも危険な魔法。欲深な貴族なら誰もが欲しいと思う人材だろう。たとえその代償が使う人間の命だろうとも。


だから旅人は気ままにあちこちを旅して、日銭がなくなったらその力で必要なだけの金を稼ぎ自分の力に目を付けた者に捕まらないうちにさっさと別の国に移動するという日々を過ごしていたらしい。