気が付けば日も高くなり昼食の時間になっていたので食事をする部屋に向かおうとするが主は予定があるからと庭のほうに向かう。


というか主、ほかの人は知っていたみたいですが肝心の貴方の従者である俺には何も聞かされていませんがこれはどういうことなのでしょうね?もちろん言い忘れていたのであろう主にはチクチクと小声で釘を刺しておいた。


さすがにこれから誰と会うのかなどと無粋なことは聞かなくてもこの人の朝からの機嫌のよさを見ていれば察することは容易だ。それぐらいにはこの人のことは知っているし長い時間を一緒に過ごしている。


この城の名物とも言われる庭を歩き、美しい薔薇に囲まれた東屋が視界に入ると心なしか早足で主はそこに向かっていった。その後ろ姿に子どものときを思い出して肩をすくませながら自分も向かう。



「遅くなってしまったね」



誰もが見とれるであろう甘い表情を浮かべているのを本人は自覚しているだろうか。そしてそれを受け取る彼女も同じような表情を浮かべているのに気付いているだろうか。



「いいえ、大丈夫です。お仕事お疲れ様です、シリル様」



感情を素直に表した桃色の瞳を和ませて、柔らかな亜麻色の髪を丁寧に結い上げた女性がふわりと笑みを浮かべる。清楚なドレスに身を包んだ彼女こそが主の(恐らくは)初恋の人であり婚約者でもあるローズ様だ。