俺もその場にいたがそれはそれは堂に入った王子ぶりで虎視眈々と主の嫁になろうと画策している貴族たちの視線もなんのその、ただ1人の人しか見えないとばかりに情熱的に求婚して了承を得るや否やその場から彼女を抱きかかえて退散するほどだった。


まぁあれだけ溺愛されている場面を見てしまったのならいくら強欲で野心家な貴族たちだろうとすぐさま彼女を蹴落とすよりも取り入ったほうが賢明だと悟っただろう。


理解できなかった馬鹿どもはもちろんすでに把握して実際危害を加えようとした者には証拠を揃えて言い訳諸々論破して処罰済みである。ちなみにそれをしたのは俺だ。


確かに主に好きな人ができたことは素直に喜ばしいと思うしこれ以上ご婦人方を相手にしなくてもいいのだと安堵する気持ちもある。


だが俺のこれまでの苦労が報われなかったことと新たなる苦労を負ったことに対して一発ぐらいは怒りの拳を入れてもいいのではないかと割と本気で思った。


結局そんなことをすれば不敬罪で牢屋の中に入れられる未来が見えたのでなんとかこらえた。ここで養われた忍耐力の賜物である。



「ルーク」


「なんですか主」



どうやら今日できることはすでにやってしまったらしい。さすが王子とでも言えばいいのか、この人は幼いころから有能だ。神は我が主になんでも与えすぎだと思う。