最近の主は機嫌がいいな、というのがここしばらく毎日のように思うことだ。それはもう日課になるんじゃないかというぐらいだ。
日の光が差す午前、次々と手元に来る資料を淡々と読みこれまた淡々と処理する主の姿は男の自分から見ても美しいと思う。それは色恋の混じったものではなく純粋に美術品を見るような気持ちでだ。
淡く煌めく金色の髪に宝石を埋め込んだかのような鮮やかな色をした紫の瞳。生まれから感じる気品と穏やかな物腰は女性なら誰もがうっとりと恋をするであろう。
見た目よし、身分よし、性格よし、の3つを兼ね備えたこの人においては結婚相手に不足はない。むしろ不足がなさ過ぎて涙が出てくるぐらいだった。
どこからでも我先にとそれはもうものすごい倍率で争っていたのは過去の話だが当時を思い出して思わず遠い目になったのは本人以外で一番被害をこうむっていたのが自分だからだろう。むしろ本人以上に被害を受けていたような気がするのは気のせいだと思いたい。
そう、我が主であるこの国の王子、シリル様は俺がこの人の嫁になりたいというご婦人方をどうにかこうにか宥めておだててたまに切り捨てている間にちゃっかり自分で好きな人を見つけてしっかり婚約まで持っていってしまったのだ。


