身分云々の話を除けばローズは誰からも望まれるような魅力的な女性だ。貴族の中には身分にこだわる人もいるがその逆ももちろんいる。


それにローズ自身に身分はなくとも母上にとっては娘のような存在だと言っているし…絶対に駄目だ。


思わずそう口にしそうになるが母上の鋭い視線に口を閉ざした。



「いいこと?あの子と一緒になりたいのなら、それが本当に望むことなら堂々とその覚悟を全員に見せて認めさせてごらんなさいな。あなたの行動がローズとの関係を決めるの。全てはシリル、貴方次第よ」



もう話すことはないと手を返す母上に私はおとなしく頭を下げて部屋を出た。


これは母上が私に与えたチャンスだ。ローズを手に入れるための。


ここまでお膳立てされてローズを手に入れられないとなったら後々母上にいびられるだろう。その未来が簡単に想像できる。



「………」



シンプルに考えれば方法は1つ。お膳立てしてもらったことも含めば母上も同じことを考えているだろう。こういうときの私の思考は母上に似ていると誰からも言われる。


まぁ断れることは考えて…いなさそうだな、あの人は。私は最悪のことを考えてしまうからヘタレと言われるのか。せめて慎重とか用心深いとか言ってほしい。


…だが、たまにはそういうことを考えずに動くのもいいかもしれない。


聡明なローズのことだ。私から会いに行っても徹底的に避けるに違いない。ならばこの時間を有効的に使わなければ。