サラリと返せばコロコロと楽しそうに笑う母上。何がそんなに面白かったのか。



「ふふ、アランそっくりかと思えばこういうときは私にそっくりねぇ。無駄にならなくてよかったわ」


「…?」



母上そっくりと言われたことに素直に喜んでいいのか…いや、あまり嬉しくはないなと考えていれば最後の言葉に首を傾げる。


無駄にならなくてよかったとはどういう意味だろうか。問うような目で見れば何かしらの企みを抱えていそうな笑みをニッコリと返された。


いつもならげんなりしそうなものだが今回ばかりは頼もしく見えるのだから気の持ちようというのはすごいとしみじみ感じる。


空になったカップに新しい紅茶を淹れながら母上は私を見つめる。



「もうすぐ、貴方の成人と婚約を祝う舞踏会が催されるわね」


「それが慣習ですからね」


「ふふふ、そこでローズのお婿さん探しをしようと思って。ローズをその舞踏会に放り込んであげようと考えていたの」



ずっと娘が欲しかったしローズは見目がいいから着飾りがいがあるわー、楽しみねー、きっと誰よりかわいくなるわー、という言葉が右から左に流れていく。


いや、それには躊躇うことなく同意するがローズを舞踏会に連れて行くのは賛成しかねる。そんなことをしたら本当にローズが誰かに見初められてしまうだろう。