「それで、さっきの縁談という話は本当にするつもりですか?」



さっさと本題に入って聞きたいことだけ聞いてしまおうとローズが座っていた席に腰をかけるとすかさず侍女がお茶を入れる。


自分自身を落ち着かせるためにも一口含むと豊かな紅茶の香りが口に広がった。



「いやぁね、この子は。母親に対してそんな敵意むき出しにならないで頂戴」


「ではわざわざむき出しにさせるようなことをさせないで下さいよ」



ただでさえローズに避けられて気落ちしているとこもに留めを刺したのは母親のようなものだ。私にも非はあっただろうから責めはしないが心情的にはそうしたい。


ただしそうしたところで倍で返されるのは目に見えているので無謀なことはしない。逃げということなかれ、平穏に生きるために学んだ処世術だ。



「縁談…そうねぇ、してもいいのだけれど。そうしたらシリルはどうするつもり?」


「とりあえず邪魔することは確実ですね」



具体案はないもののそれはすでに決定している。誰が好き好んで好きな人が見合い同然のことをするのを黙っているというのか。


ローズの気持ちが自分にあることはわかった。そして身分を弁えたが故に私から逃げているのも理解している。


だからと言ってそれを受け入れるかと言えば答えは否で、だったら彼女の気遣いはこの際置いておき強引に進めるしかないだろう。あまり好みではないが背に腹は変えられない。