「それで、話というのは?」
早く聞いてローズのもとに行きたいと気持ちが急く。最も今から追いかけたところでどこに行ったのか検討もつかないが。
そんな心情を見通しているのだろう。クスクスと笑うリリアス姫はご機嫌そうだ。
「これから実家に戻りますわ。領地のこと、民のこと…それに何より父のこと、ありがとうございました」
穏やかな笑みをたたえて優雅に頭を下げる姿にそのことかと私もかすかに笑みが浮かぶ。
実際に私は指示しただけでこのことを調べさせて動いたのはルークや他の者たちだ。特にルークは動いただろう。
お礼を言うならそちらにしてくれと言ったらすでにそちらにはお礼を述べてきたらしい。私が最後だとか。
「そうか、貴女の婚約者は?」
「元、婚約者ですわ。ですが向こうも気持ちは変わっていないということですから改めて婚約したいと思っております」
見たこともない幸せそうな表情で言い切るリリアス姫に知らずに安心した。
私自身が気になったか、と調査をして手を出したが…余計なお世話とならなくてよかった。まぁあれだけのことをしていたのだから時間の問題だった気もするが。
それにそれとこれとは話が違うというもので彼女がローズにしたことを許せるかどうかは別の問題だ。……自分が狭量だという自覚はある。


