自分勝手で理不尽。そうは思うものの個人の感情なんて所詮はそんなもので考えるよりも先に身体が動く。


母上の挨拶もそこそこに急いでローズの後を追いかけてその腕。掴むと驚いたような表情の彼女が私を映した。


久しぶりに受け止めた視線に否応なく鼓動が増す。感情が嬉しいと叫ぶ。


だがローズから聞いた話にそれもなりを潜めて残ったものは怒りとそれを上回る悲しみ。


その相手は、ローズの隣に立つ男は私ではいけないのか?少なからず貴女に好意を向けられていると感じたのは自惚れだったのか?勘違いだったのか?



「っ、私は……」



貴女のことをこんなにも恋しく思っているのに…!


そう感情のままに気持ちを吐露しそうになったときに「シリル様、」と別の声が私を呼んだ。


驚きから思わず手を離して振り返るとそこにはリリアス姫がいて。なぜこのタイミングなんだと間の悪さに苦く思っているとその隙にローズは走っていってしまった。


そんなに…走って逃げるくらい私のことが嫌なのだろうかと少しショックを受ける。



「あら、逃げられてしまいましたわ」



どことなく面白がっているような響きのある声音に軽くため息を吐いてリリアス姫と真正面から対峙する。



「…付きの者は?」


「そこにいますわ。最後にお話がしたくてシリル様を探していましたの。意図せず良いタイミングになってしまいましたけれど」


「図ったようなタイミングでしたよ…」



ルークがここにいれば笑われそうだ。そしてまたヘタレと言われそうだ。