そこまで考えて、もしかしてこの人は私を見ていながらも違う人を見ているのではないかと思った。
どうやらその考えは間違ってはいなかったらしい。動揺したのがいい証拠だ。
「全く……まだ甘ちゃんな殿下だと思ってたのに、甘かったのはわたくしの方だったようですわね」
ふぅ、と何かを諦めたように息をこぼすリリアス姫。何気に不敬なことを言っているような気もするがとりあえずは黙っておく。
しばらくは無言の時間が過ぎて、次にリリアス姫が顔を上げたときは穏やかな年よりもずっと大人びた表情を浮かべていた。
「庭師の彼女…ローズだったかしら?彼女には悪いことをしたとは思っても謝る気はないわ。わたくしはわたくしがしなければならないことをしただけですもの」
その言葉に眉が寄るが先ほどよりはずっと不快感はない。それは彼女の雰囲気が一変したからか。
凛とした姿はさっきまでの様子とはかなり違って見える。こちらが本来の彼女の姿なのだろう。地位にふさわしい貫禄のようなものがある。
それなのになぜあんな風に振舞っていたのかがわからない。こちらの方がいいと思うのが普通だと思うのだが。


