一歩、こちら側に足を踏み入れたのを見たと同時に口を塞いでその人の腰を引き寄せる。
ふわりと波打った亜麻色の髪が視界をかすめ、薔薇の花のように人を誘う甘い香りが腕の中で漂った。
(、は………?)
そんな間抜けな声が出そうになり自分の目がどうかなってしまったのかと慌てる。
てっきり兵士かと思ったその人は、私と年があまり変わらなさそうな華奢な体つきの少女だった。
(いや、え。なぜこんな時間こんな場所にこんな少女が…)
混乱しながらも「静かに、」と耳元で囁くとビクリと肩を揺らす少女。
触れているところから伝わる小さな震えに内心で参ったと呟いた。
こんないたいけな子をほぼ力ずくで引き入れて口を塞いで拘束しているのだからそれは恐ろしいだろう。なんというか、本当に悪いことをしてしまった。


