小首を傾げるリリアス姫からは微塵の後悔も感じられない。間違ったことはしていないという堂々とした姿に後ろから不機嫌な舌打ちが響いた。
仮にも私との話でそんな無作法をするとは…まぁルークはこういう人間を嫌うから仕方ないとは言え、普通にやったらルークの方が罰を受けるぞ。
「シリル様。わたくしは美しいでしょう」?」
自分がどうすれば一番魅力的に映るのかを理解しているのだろう。そしておそらく、その魅力に自信を持っている。
誘うような目で私を伺いゆったりとした動作で隣に腰を下ろして豊満な体をさりげなく押し出して来る。
こういうものは好意がなければただ不快なだけなのだが。というか困る。
「家柄だって地位だって、教養だって知識だって、わたくしは持っていますわ。あの子が持っていないものをわたくしは持っている、貴方に与えることができる。わたくしの方がシリル様にふさわしい」
そうでしょう?と艶然と微笑むリリアス姫の瞳には私が映っている。その中に私はゆっくりと笑みを浮かべて。
家柄?地位?そんなもの私には必要ない。
教養?知識?そんなものは後からいくらでも積み重ねることができる。
大切なのは、私が求めるものはそんなものではない。


