そんな思考を一度頭から追い出して再びリリアス姫に向き合う。
「ローズは不思議な魔法の使い手で、彼女は庭師という立場ではありますが道具を使いません。にも関わらず貴女の言った通り剪定鋏には誰かが使った跡が残っていました。どうしてでしょうか」
「っ、それは、」
「あの日薔薇園に入ったという人物は2人、ローズと貴女だけ。薔薇の惨事が見つかる直前までローズは城の中で他の仕事をしていたという証言はすでに何人もの使用人から取れています。それに対して貴女は朝に入り長い時間薔薇園にいたそうですね。そんなに長い時間、一体何をしていたのです?」
私が口を閉じるとしん、と部屋の中が静まった。
しばらくするとリリアス姫はクスクスと1人笑みを落とす。その様子に控えていたルークが警戒するが手を挙げて抑える。
笑いを止めて顔を上げたリリアス姫はニッコリと笑みを浮かべるが、その笑みはどこか諦めたような色と安心したような何かを含んでいるように見えて。
なぜか私の目には彼女自身に悪いものを感じられない。それは私の甘さが原因なのか……
「ごめんなさい。でも邪魔だったんですの、あの庭師の娘さん」
「、ご自分がしたと認めるのですね」
「ふふ、そうね。でもそれの何がいけないのかしら」


