艶やかな笑みはそのままに首を傾げるリリアス姫。
「そう聞こえたのなら謝りましょう。何か心当たりがないか聞きたかったのですよ」
意識して困ったような表情を浮かべると「そうね、」と考えるように一度黙ってニッコリと笑うリリアス姫。
「心当たりではないけれど庭師だという女は見たかしら。なんだかいろいろな道具が入ったものを持っていたし、彼女の自作自演という可能性も考えた方がよろしいのではなくて?」
「自作自演ですか」
「えぇ。庭師の使用する道具の中には剪定鋏ももちろんあるはずでしょう?それを使えば薔薇を全て切り落とすことも可能だわ」
……やはり、推測通りだったか。
「そうですね。時間はかかるもののあの日の城内は忙しく、準備にも追われていたから庭に来る人も早々いない。人の目を気にせず1人で行動することなど容易いでしょう」
「……何が言いたいのかしら?」
ここにきて初めて人形じみた作り笑いから少し訝しげな表情になったリリアス姫。
貴女も爪が甘い。おかげで私は自分の推測に自信を持てる。
私は聖人ではない。そうありたいと思っても人間なのだからやはり全てにおいて許しを与えられるような善人にはなれない。
大切な人のためならば、その人を傷つけた人間にそれ相応の罰を与えることを躊躇わない人間だ。
……彼女はこんな私を見てどう思うだろうか。


