本当は今すぐにでも会いに行って抱きしめてあげたいし、傷ついた心に寄り添いたい。


でもそれは、今の私にはできない。



「母上、ローズを頼みます」


「あら、シリルに言われなくても大切な娘ですもの」



遠回しに言われなくても大丈夫だと言ってくれる母上に甘えて、父上にも頭を下げてからルークを伴い自室を出る。


そのままリリアス姫がいるという部屋に行くと私の姿を見た途端に艶やかに笑みを浮かべるリリアス姫の姿があった。


毒を含んだ花のように危険な笑みなのにそれはどこか人形じみた機械的なもので、そのアンバランスさが返って危うい。



「ご機嫌よう、シリル様。こんな部屋でわたくしになんの用事ですの?」


「心当たりがないとでも?」


「えぇ、全く」



ふふ、と笑うリリアス姫に気を抜くと表情が引きつってしまいそうになる。いつも通りを心がけてはいてもちょっと固くなっていることだろう。


例えこれが彼女にとってしなければならなかったことで本位ではなかったとしてもそれを受け入れられるほど私もできた人間ではない。


…まだまだ私は王の器として父上には敵わないな。



「単刀直入に言いましょう。数日前ら薔薇園の薔薇が全て誰かの手によって見られない姿になっていました。貴女を見たという兵士がいるのですよ」


「あら、失礼ですこと。わたくしがやったとでも?」