微かな声、というよりは音と表現した方がいいような本当に小さな声に彼女の名前を呼ぶ。


目が覚めたわけではない様子に怪訝に思うものの見つめていると微かにその口を開いて。



「お、か…さ……と、さん……」



苦しげな呼吸の中で呟かれたそれに思わず目を見張った。


いつも柔らかく優しく笑っているから気づかないけれど、やはり当たり前に大切で大好きな人がいないことに寂しさを感じている彼女。


過去の話をしてくれたときにも大切な思い出に懐かしそうに話してはくれたがどこか悲しげに目を伏せていた。



「ひとり、は……、いや………、」



ぽろり、閉じた瞳から一筋の涙が伝う。


あぁ、こんな状態にならないと本当に感じている心の弱さを出せない彼女がいじらしくて切なくて愛おしい。


そっと、今にも壊れてしまいそうなガラス細工のような彼女の頰に触れて昔母上がしてくれたように頭を撫でる。



「大丈夫」



私がいる。ずっと貴女が望むのなら私がローズの隣でずっと貴女のことを見ていよう。


こんな風に寂しいときには寄り添って、触れて、一人じゃないことを教えてあげよう。



「ローズ、貴女は一人じゃない」



守りたい、誰よりを優しい貴女のことを。