ホールの方に向かう父上の背中を見送り、母上の許可を得てからローズのいる部屋に入る。


ここは一応私の部屋なのだが……まぁ彼女をここにと言ったのは自分だから仕方がない。


ベッドの傍らに椅子を置きそっとローズの手を握る。眉を寄せて苦しげに息をする彼女を見ているだけで心が痛んだ。



「とりあえず私も着替えてくるわ。このままじゃ動きにくいもの」



今日のためにと仕立てられたドレスを忌々しそうにむんずと掴む母上。さすがにドレスが不憫だ。前から仕立て屋が頑張っていたというのに。



「ローズがかわいいからって私が帰ってくるまでに襲ったりしちゃダメよ!」



ビシッと指を差して念押ししてから心なしか速い歩調で部屋を出て行く母上を見送る。なんというか、忙しない。


でもこういうときに走ったりしない母上は尊敬する。私がまだ未熟なせいもあるのだろうが、私なら走ってしまうだろう。王妃という立場をよく理解していると思う。


それにしても、



「こんな状態の彼女に何もできるわけがないのに……」



変なところで頭が回らないというか、常識が通じないというか。それとも私はそんな常識外れに見えるのか。それはそれでショックだ。



「……、っ…、」


「ローズ?」