「(それで花束か……)」
確かに結婚を控えた彼女に何か送ろうとは思っていたがそれを利用してローズと話をしろとは。
なんというか、さすが母上の血縁としか言いようがない。使えるものは使う、みたいな精神が母上と重なるな。
お昼を少し過ぎた昼下がり、この時間帯ならいるだろうかと庭に出るとローズがいて心が弾む。
自然に緩む頰て近づいていくと小さな歌声が聞こえてくる。こちらに気づいていない彼女が鼻歌を口ずさんでいるらしい。
楽しそうに笑いながら薔薇を愛おしげに見つめ、優しく触れているローズを見ていたいという反面、自分を見て欲しいとも思う。
最終的には後者を選び「ローズ」と声をかけると驚いたように振り返りちょっとだけ頰を赤くした。
「シ、シリル様、いつからそこに……?」
もしかして聞いていましたか?と恥ずかしそうにするローズに微笑めば伝わったみたいでますます恥ずかしそうにうつむいた。
「貴女の歌はいつも癒されるな」
「い、いえ。あんな拙い歌、聞かれてしまってお恥ずかしいです」


