「貴女の笑顔を初めて見られたな」



ポロリと無意識のうちにこぼれていた言葉に目を丸くする彼女に微笑む。



「貴女は笑顔が似合う」



ふわりと咲くその笑顔はこちらの心まで綻ばせるような何か魅力的なものを感じる。まるで愛らしく咲く薔薇のように。


頬を染めて私の言葉に照れる彼女にトクンと心臓が鼓動を刻んだ。


会って2回目にも関わらず、いろいろな彼女の表情を覗いたきがする。


涙を流す姿、困惑に眉を下げた顔、大人っぽい女性の表情、可憐な笑顔、照れた頬の色……


まだ私が見たことのない表情を見たい、知りたい。


他人に、それも異性にそんなことを感じたのは初めてで、新しい自分を見つけたことに高揚すると同時に緊張する。



「いつまでも貴女では呼びにくいな。名前を教えてもらっても?」



貴女の名前を呼ぶことで、この胸の感情に色をつけられるような気がするんだ。


予想外の人の乱入で彼女の口から聞くことは叶わなかったがやっと知りたかった名前を知ることができた。



「ローズ……」



薔薇のように可憐で愛らしく、どこか気品にあふれ美しい。まるでピンクの薔薇のような彼女にぴったりな名前だと思った。


全てのことが初めてで経験もしたことのない感情だが、この気持ちに名前をつけるのならきっとそれは恋なのだと、そう思った。