嫌だと思ってはいても時間は進むもので、現在私は夜の薔薇園でお姫様たちに囲まれていた。


夜に咲き誇る薔薇の幻想的な美しさを楽しむ余裕もなくあっという間に囲まれてしまった。隣では同じように囲まれているルークの姿もある。


こういうとき見目のいい付き人がいると言葉は悪いが身代わりにできるのでありがたい。ルークからは嫌な顔しかされないが。


やんわりと笑みを浮かべながら頃合いを見て「失礼、」と人の輪から抜け出す。ルークに押し付けて広場から抜け出した。


すぅ、と夜独特の自然な香りを吸い込む。人工的な甘ったるい匂いではない自然な香りに肩の力を抜いた。


どうにも香水のような人工的に作られた甘すぎる匂いは苦手だ。


周りにそういうものをつけない人が多かったのと、この薔薇が身近にあったからだろうか。


少し気分転換に歩いてから戻るかと手持ちぶさたに歩いているとぼんやりと浮かぶ頼りない明かり。こんな時間に誰かいるのかと覗いてみて目を見張った。


小さな燭台に明かりを灯して本を読んでいるのはあの時以来に見た庭師の彼女だ。


本を読むために伏せられたまつ毛と軽く閉じられた唇がどちらかというと可憐でかわいらしい容姿の彼女を大人っぽく、色っぽく見せている。


周りが暗いというのもそういう雰囲気に見せている一因なのだろうか。以前見た時とは全く違う顔に引き付けられた。