「できればローズが少し落ち着いてから行きたいですね」



今この場にいない彼女を思う。あの舞踏会から婚約し、少し時間をあけてから無事に結婚式を挙げた。その間に問題は少しずつ起こったけれど、父上や母上、その他にもローズを大切に思う人たちの力を借りて無事にここまで来ることができた。


そして今、ローズのお腹の中には新しい命が宿っている。そのせいで最近は十分な食事や睡眠がとれておらず、少しでも体にいい環境で過ごせるようにと今は自然の多い離宮で過ごすように言ってある。


彼女が近くにいないのは少し…いや、本音をいうとかなり寂しかったりするのだが、これも彼女と彼女のお腹の子どものためだ。


それに3日に一度は手紙を書くようにしているのでローズのことをあれこれ考えて手紙を書いたり、逆にローズから手紙の返事をもらうのは日々の小さな楽しみにもなってきている。


お陰でルークからは「貴方たち結婚してるもの同士の夫婦でしょうが。なに今更になって初々しい交際したての男女みたいなことして頰染めてるんですか」と呆れられたりしたが、そういう期間、というか時間があまりなかったのだから少しぐらいいいだろう。



「となると秋…いえ、ローズのことを考えると冬に入るわね。どうせその間行けないのだし、せっかくなら春まで待ってマリーたちの命日に赤子と一緒に行きなさいな」


「そうだな。孫に会えた方がジルバたちも嬉しいだろう」



その間にできる仕事は片付けておけよ、あぁ孫のことは心配するな私たちが世話を見てやるぞ、と仕事をこちらに押し付ける気満々な父上に乳母や世話役を雇うからと断る。


私だって愛する妻と子に会いたいのだ。できることならもっと父上には国王として現役でいてほしい。



「主、」



そっと近づいてきたルークが耳元で囁いた言葉に自然と顔に笑顔が浮かんだ。



「では、この話はローズが子を産み終えてからにしましょう。私は今日はこれで」



心なしか早足になって部屋を出る姿を父上と母上は全てを理解しているような満面の笑みで見送っていた。