「王妃様が思い付き陛下がまとめて庭師が提案したみたいですよ」
「彼女が?」
思わず声をあげてしまう。そうか、この城の薔薇の世話をしているのだから当然薔薇には詳しいはず。それで母上は彼女に…
「おや、この城の庭師が女性だとよく知っていましたね」
意外だと目を見張るルークにこちらも同じような感想を持つ。
彼女のことをあの日まで見かけたことはなかったが頻繁に城に出入りしているのだろうか。それともこの城で寝起きしているのか。
それにしては見たところ成人もしていないような年齢に見えるのだが。
「ルークも、彼女のことを知っていたのだな」
「えぇ、当然でしょう。それが俺の仕事でもありますから」
城にいる人を把握するのも立派な俺の仕事です、とルークは眼鏡をあげる。ということは彼女の名前も知っているのだろうか。
聞こうかとも思ったがなぜと聞き返されても困るし彼女自身の口から聞きたい気持ちもあったので黙っておく。
「何より彼女はずっと前からこの城にある薔薇園の世話を1人で担っている古株ですし、あの容姿と性格ですから兵の間では『薔薇の乙女』と呼ばれてちょっとした人気みたいですよ」
本人は気づいてないようですが、とさらりと言い残りの資料を机の上に置く。


