じゃあ何を考えるかといえば特にこれといったこともなく。いや、考えるとかしなくてもいいんだろうけどなんか無為に時間を過ごすのってもったいないように感じるし、何より何か考えてないとそれこそ嫌なことばかり考えそうで怖い。


はぁ、と大きくため息をつくと同時に視線をしたへと下げるとちょうどよく風が吹いて木の根元に咲いていた花がそよりと可憐な花びらを震わせた。小さくて淡いピンクをした花は夕日の成果少しオレンジがかって見える。


……そういえばあの旅人は今何してるんだろう。ふと頭の中に浮かび上がってきたのは最後に意味不明な言葉を残して姿を消したあの不思議な人のこと。


なぜか気づけばあの人のことを考えている自分がいて釈然としない。最初はあの言葉の意味が分からなくてそれを考えていたけど次第にそういうのは関係なく「今何してるのかな」「今どこら辺にいるんだろう」となんとなく考えてしまう。


この感情がどういうものなのかわからなくてもやもやして放置していたけど、わからないはわからないなりにわかってはいるのだ。ただわたしははっきり言って人との関わり合いがないに等しい環境で育ってきたから心の機微には疎いと自覚していて確証が持てないだけで。いや、だから放置していたんだけどさ。


でもわかっているものもある。それは寂しさだったりイライラだったり、また会いたいなって思ったり…複雑で一概には言えない感情。



「名前ぐらい、聞いておけばよかったかも……」