理不尽だとは理解しているものの怒りにまかせて大声でわめきたかった。だけどそんなことしたら一発で後ろにいるであろう人たちに見つかるのでどうにか抑えて木の根元に隠れる。遠くから音や声、みたいなものが聞こえるたびにびくついてしまう。


あぁ、もう…人生ってままならない。こんな最後の最後に人の心を折るような結末用意しておくとかこの世界の神様は根性が悪すぎる。散々期待させておいてそれを手のひらを返したように…あぁ、でももとからそうだった。今回わたしが期待しすぎただけで。


本当にいい神様なら母親が生きていたときに何かしらしてくれたはずだもん。あの家の中で一番優しくて弱かったのは母だった。その存在に何も手を差し伸べてくれなかったんだから神様はもとから意地悪だったんだよ。



「あーっ、もう…わたしらしくないっ」



やだやだ、いいことばかりのところに悪いことが起きたからってこんな弱気になるなんて。過去のどうしようもなかったことにうじうじしてネガティブなことばかり考えて……そうしてて事態がいい方向に行ったことなんてないんだから考えるだけ無駄だ。


それより今、これからどうするかだ。気づけば太陽は山に近くなっていてあと1時間もすれば完全に落ちてしまうだろう。そうすれば気温も下がるし獣だって出てくるかもしれない。うぅ、さすがに獣に食われて命を終える最後はご遠慮したい。


でも夜になればわたしを探す人も諦めて帰ってくれるかもしれない。もし継続するとしても明かりを持っての捜索になるだろうからすぐに気づいて逃げられる、はず。多分。


ちょっとだけさっきよりも元気になったかもしれない。こういうときは気力が大事だからもうあんまり後ろ向きなことは考えないようにしよう、そうしよう。