いきなり声を上げたわたしに驚いた数人がこちらに視線を向けるが生温―い笑顔でごまかしておいた。我ながら怪しい人だとはわかっている。でも無意識だったんだから仕方ない。


羞恥からかすかに熱くなった頬を冷ましつつ歩けば検問のところに付いた。ドキドキしながら終わるのを待っていれば交代の時間なのだろうか。何人か新しい人たちが来て何かを話している。


こういう光景はよくあることなのかと気になって隣にいた人に聞いてみるとそう珍しくもないけど大体は一言二言で済むものらしい。ほうほう、じゃあここまで話してるのはめったにないと?


ざわ、と心がざわつく。こういう予感めいたものってすごく嫌だ。良いものならまだしもこの状況で考えられるのって絶対わたしに不利なのじゃないか。


教えてくれたことにお礼を言ってさりげなく検問所で話すことに耳を傾ける。やっぱりわたしのことのようで逃げ出したことがばれて万一の場合に備えてここに来たら捕まえるようにってことらしい。


ご丁寧にわたしの髪や瞳の色、身長や今着ている服の情報まで筒抜けで思わず舌打ちしてしまった。あの家庭教師がいたらもっと貴族のお嬢様らしく上品にしなさいと怒られているところである。


それはさておき、このままだと商人の隊に紛れて国境を超えるというのも難しくなってきたかもしれない。多分ここ通過する人は全員調べられると思うし。でもここからまた引き返したところで捕まるのは確実。


せっかくここまで来たのに…っ、戻るなんて論外!戻ったら捕まって次のチャンスなんて絶対にこない。今回だってたまたま運が良かっただけなんだから。そんな先の見える結果を招くぐらいなら一か八かの賭けに出る。


ここまでは運がよかったんだから、最後までわたしを見捨てないでよね神様!!!



「そこの女性、ちょっと待ちなさい」



のおおぉおおおぉぉぉっ!!!言ったそばから神様のばかあぁああぁぁっっ!!!!!