見た目いい人そうでかつ人のできるだけ多い商隊に目をつけて一歩を踏み出す。近くにいたまだ年の若い人に声をかけてみても何も反応を示さないところを見るとまだわたしの情報は出ていないらしい。逃げたかどうかばれたのは、まぁ置いといて。
「確かにこれから隣の国に行くからそれに便乗するのはいいけどねぇ」
すぐにこの商隊のトップの人のところに通されて適当に理由を言って隣国に行くまで一緒にさせてほしいことを伝えるが、案の定あんまりよくないお返事…副音声に厄介ごとはごめんだと聞こえる。こ、これぐらいは予想してたから!へこたれてなんかないもん!
ちなみに馬鹿正直に本当のことを言わなかったのはわたしが一応は貴族の一員で貴族に関わることだと知られればイコールで面倒なことばとばれそうだったから。そうするとこの商人さんめっちゃ合ってる。すごい。
だがしかし。わたしだって一世一代、最後の賭けなんだから引くわけにいかない。こうなったら……
「わたしを隣国にまで連れて行ってくれるならその報酬にこれを差し上げます」
簡素なワンピースのポケットに入れていたものを取り出して商人の前に出せば空気が変わったのがすぐにわかった。本当なら旅の資金にしたかったけど背に腹は代えられない!!もってけ泥棒!!


