侍女やほかの人には外で待っているように言い近くにあった宿のトイレを借りるべく中に入る。まぁ目的トイレじゃないけども。あまり時間をかけることはできない。長引けばそれだけ変に思われて逃げるための時間がなくなってしまう。


さっと周りを見渡せばなんとなくの間取りはわかる。だいたいの宿なんてどれも似たような感じだし。それなりにいいところの宿なので同じような階級の人が周りにいるのは助かる。


しれっとトイレに行くふりをして近くの部屋に入り込めば運がいいのか従業員の休憩室のようでしかも誰もいない。ちらり、自分を見下ろす。



「……いけるわ」



誰のものかわからないけどごめんなさい!借ります、というか頂戴します!これでもちょっと悪いと思っているけど代わりにわたしのドレスおいていくから代わりの洋服の代金として許してくれ!


普段から自分のことは自分でしていた甲斐はあった。普通の貴族だったら全部使用人任せだし。わたしからしたらそっちのほうが考えられないけどね。


さっさと着替えて髪も頭巾で目立たないように隠してついでに置いてあった眼鏡も拝借してから自然な動作で裏口に向かう。その途中でこの宿の人だと思われたのか買い物頼まれたのは予想外だった。受け取った籠、どうしよう…


小道具としてはありがたいのはありがたいしこの弁償もドレスで賄ってもらうことにしようと自己完結しつつ外に出る。さすがに監視もここにはいないみたいでわたしははやる心を抑えつつ不自然に思われない程度の速足でその場から立ち去った。