ガタゴトと揺れる馬車の中から窓を覗きため息を吐く。なんというか、生きてきた中でこんなに時間があっという間なのは初めてだとある意味悟りを開いてしまった気がする。


あの夜の日以降あの不思議な人はわたしの忠告に従ったのかそれともわたしなんて忘れてしまったのか、理由は定かではないが来ることはなかった。わたしから言っておいてなんだけどやっぱり気兼ねなく話せる人がいなくなるのは寂しかった。


まぁそれ以上にあの夜の行為の意味が考えても考えても考えても(以下略)意味不
明でわからなくてもやもやするほうが大きかったがな!!!


わからないものをうんうん唸りながら考えていたせいであっという間にわたしの嫁入り準備が整ったのは考えようによってはよかったのかもしれない。ずっとできるかわからない脱出計画のことを考えてるのは精神的に苦しそうだし。


ずっと揺れていた馬車が動きを止める。乗る前に聞いていた休憩の時間になったらしい。逃げる可能性を考えてか必要最低限のことしか教えてもらえなかったけど。前科があるから強く聞けないのが痛い。


そっとカーテンをめくって外の様子を見れば周りに建物は少なくて自然が多い。ほんの少しだけ潮の香りもする。事前に調べていた情報と時間的な関係からして行動するのはここしかない。


失敗したら、と一瞬頭に浮かぶが今さらそれを考えても仕方ない。もう来るところまで来たんだからうじうじするより行動あるのみ。



「あの、お手洗いに行きたいのだけど」



一緒に家からついてきた侍女という名の監視にそう言って外に連れ出してもらう。他にも護衛という名のおまけもついてきてしまったが仕方ない。じりじりしながら侍女の後をついていった。