マイペースだマイペースだとは思っていたけどこれはいったい何をしたいんだ…わからない。不思議な人の思考はわからない。



「強いだけじゃなくて、なんていうか、感情が生き生きしてるというか、君を見ていると綺麗だなぁって思うよ。初めて会った日なんか白い服着て羽なんか舞ってたからびっくりして天使かと思った」


「は……?」



羽?え?わたしとあなたが初めて会ったのってあのくそみたいな夜会だよね、と思ってはたと気づく。そういえばあの日の午前中白い寝間着のまま枕1つ駄目にして部屋中羽だらけにしたような気がする。もしかしてあれ見てたんかい!!


さっきとはまた違う羞恥とそれ以上の驚愕にあんぐりと口を開けて固まっていると目の前の人は楽しげにクスクスと笑う。そんなに不意を衝いたことが嬉しいか。そもそも淑女の部屋覗き見とかどうなんだ、と恥ずかしさをごまかしておいた。これ以上考えると多分墓穴を掘る。



「君、結婚しちゃうんでしょ?ほかの誰かのものになるの、ちょっと悔しいなぁ」


「え?」


「俺、結構君のこと好きっぽいから」



楽しげな笑みのままちゅ、と手の甲に口づけを落とされる。反応を返す間もなく「じゃあね」と手を離されて夜の中に消えていく男を見送るわたしにできることなんて。



「………は?」



ぽかんとする以外何があったのか。誰か教えてほしい。