とりあえずそういう理由があって開かれるのならば私は特に何をするでもなくいつも通りにしていればいいだろう。
食事も終わったので自室に行こうと立ち上がると「そういえば、」と呼び止められる。
「最近よく庭に行ってるみたいだけど、何か気に入ったものでもあったのかしら?」
思わず肩を揺らしてしまったのは図星だったからなのか。それともただ単に驚いたからなのか。
名前も知らない彼女に会えるだろうかと淡い期待を持ってよく庭に足を運んでいたのをよりにもよって母上に知られるとは……
「いえ、その、」
「ふふ、まぁそれはいいわ。また明日ね」
全てを見通しているかのように意味ありげに微笑む母上に居心地の悪さを感じる。なんだかんだ言っても父上よりも敵に回したくない人だ。
父上も苦笑しながらも楽しげに私と母上を見ていた。
「では、おやすみさない」
これ以上ここにいても墓穴を掘ってしまいそうに感じて早々に退散する。全く、あの母上と結婚した父上がすごい。私には無理だと思ったところではっとする。
だから我の強いお姫様たちがあまり好きじゃないのかもしれない。なるほど、縁談相手にあまりいい印象を持てないのもそのせいか。
(それに比べて…)
庭師の彼女は控えめで謙虚で母上とは正反対のタイプだ。だから気になっているのだろうか……


