エスケーピング


そう苦笑する花音に、私は苦笑で応えた。

吹奏楽部に限らず、運動部や文化部も7時過ぎまでやっていて、うちの学校の大半は電車通だから、あまり寄り道する人は少ない。

普通科と特進科のある公立高校で、ほとんど進学だから、勉強する時間を減らしたくないという人が多いんだ。


「私ね、ずっと杏ちゃんが羨ましかった」


杏の言葉からは、放課後寄り道できる私に対するものか、私自身が、なのか、わからなかった。

にこにこ笑う花音を見ながら、なんとなく笑って言葉を流したら、グッドタイミングでケーキとワッフルが来た。