エスケーピング



平谷さんを見れば、棚の整理をしていて、こちらを見る気配がない。

しかたなく、椅子に腰をおろす。


「聞いてもいいか?」

そのためらうような言葉を聞いたのは、本日2度目。

ゆっくり頷いた。


「家出の理由、教えてほしい」

3日目にして、やっと、か。

「嫌なことがあって、突発的に家出したのなら、親御さんが捜索願を出す。もう1日や2日なら様子見する人もいるが、3日となると、さすがに心配になるだろ」

「父親とケンカしたんです」

「なら、父親から連絡ぐらいきてるんじゃないか?どこにいるのか、って」

「いいえ」


きっぱり返事をした。

同じ父親として信じられないのか、滝沢さんは首をかしげている。