獣を倒してしまえば、森の中はひどく静かだった。
まだ焼けこげた木や草の匂いが漂っていて、戦闘は嘘じゃなかったんだ、とぼんやりと思う。
「体質、なんだ」
ソラくんがぽつりと零した声も、閑散とした枯れ葉や木々に吸い込まれていく。
「魔法は奇跡じゃない。自分にある能力を最大限に利用した道具だ、って授業でも言われてるよね。僕の魔力は、血液なんだ」
「血液?」
「体内で魔力を生成するときに、血液が消費される。魔法の質はいいけど、量をたくさん扱うことができない」
全身から血の気が引いていく。
だからさっきの炎の威力がすごくて、獣を一撃で葬ったってこと?
でもそれと引き換えに、ソラくんは消耗した。下手したら、死に近づいている。
「ごめん、なさい」
私のせいだ。
私がぼんやりしているから、好きなひとと一緒にいることができて、浮ついた気持ちでいたから。
「ルトさん、泣いてるの?」
「え……?」
気がつけば頬を流れる水。
唇の端についたものを舐めると、とってもしょっぱかった。
「俺はルトさんに救われてたよ」
思いがけない言葉に、顔を上げた。