「そう言えば……811号室のお客様のクレームが
どうとか話をしていました。ですが……それは
すでに解決しましたし」

「総支配人のことですから
自らお詫びに行かれたのかも知れませんよ?
だとしたら今頃……高城さん。
悪いけど総支配人を捜しに行ってくれるかい?」
小山さんからご指名がきた。

えぇっ!?今ですか?
そんな……せっかく小山さんと一緒に働けるのに。

「分かりました。でも……これは」

「私が代わりにやっておくから」
そう言われるので渋々小山さんに代わってもらった。

実は、
私は、昔から人探しが得意だった。
かくれんぼの鬼になれば、相手をすぐに見つけたし
道案内も得意。
観察眼に優れているのだろうと言われた。

そのためか、総支配人を捜す時は、
私が自然に担当することになってしまっていた。

そう……総支配人は、冷静沈着な割りに
極度の方向音痴なのだ!!
その上……何でも自分でやりたがる癖があるため
ホテル内でも迷子になることは、珍しくもない。

そのせいか総支配人とは親しくなった。
周りは、いいなぁ~と羨ましがられるが
私は、複雑な気持ちだった。

フロントから出ると私は、エレベーターに乗ると
13階で降りる。
いつもの彼の行動なら多分、エレベーターを途中で降りたはず。

811号室は……16階にあるから
それより下か……上に……あっ!!居たわ。
13階から廊下を見て周り階段を使い上がって行くと
15階で発見した。