不安定なテトラポットの上で、何年ぶりかの体育座りをした。

膝に額を当てて顔を埋めると波の音が際立って聞こえた。

自らが吐き出す暖かい息で顔が火照る。


『バカだなー』

かつて何度も聞いた言葉が耳の奥で響いた。
それと同時に、頭の中の引出しから取り出される古びた記憶。

小学6年生の夏に初めて来たこの海。それ以来、ほぼ毎年のように訪れた。

中学生の時も、高校生の時も。挙げ句の果てに大学生になってからも幾度となく訪れた。

あいつも一緒に。

とんだ腐れ縁だ。


「あーあ、清々したっていうのに、うざいったらありゃしない」

「悪かったな、うざくて」

聞きなれた彼の声に私は振り返ることをしなかった。

分かっていたから。砂を踏みしめる足音で、すぐに彼が来たのだと。

無性に悔しくて乾いた唇を噛み締めた。