「綺麗……!」

グラウンドの脇の桜が見えた。
月明かりに照らされている夜桜はとても綺麗で、思わず見惚れてしまう。

何分くらいそうしていただろうか。
はっと我にかえる。

「お腹空いたなぁ。あ!帰らないと!」

帰りに桜の近くまで寄ってみようかなぁ。
なんて考えながら校舎を出る。
もう外は真っ暗だ。

本当ならすぐに帰るべきなんだろうけど、なんとなく引き寄せられるように私は桜の方へと歩いて行った。

やっぱり近くで見ても綺麗だなぁ。

「ぁ……。」

息をのんだ。

桜の木の下には、ひとりの男子生徒が立っていた。
まるでお別れを言うように桜の幹に触れていた。

桜同様月明かりに照らされた彼は、とても美しくみえた。
その幻想的な美しさから私は目が離せなかった。

そして男子生徒が私に気づいたのか、静かにこちらを振り返った。


どきんっ………


胸が高鳴った気がした。

中性的で整った顔をした彼の、その儚げな表情を見たとき、私はとっさに叫んでいた。