木漏れ日の中で

一服を終えて彼が戻ってくるには長すぎる時間が経った頃、ようやく彼の姿が見えてきた。

「そろそろ帰ろう。お義父さんが心配してる」

「ええ。そうね」

「彼…タバコは吸うのかな?」

「わからないわ。でも、成人したら吸ってみたいとは言ってたわね」

「そうか。では、口に合うかはわからないけど、一本どうぞ」

そうやって彼は僕にタバコをくれた。そのタバコの火が消えない内に彼女達は家路についた。

「心配しないで。必ず幸せになってみせるから。大丈夫。だから、安心して眠ってて。きっといつか絶対に会いに行くから。あ、でもその頃はしわくちゃのおばあちゃんかもね。可愛い女の子じゃなくても怒らないでよ?それじゃ、おやすみなさい」

彼と彼女は僕に向かって、いや、正確には僕の名前が刻まれた墓石に向かって手を合わせると、立ち去った。もう二度と彼女が振り向く事はなかった…

-完-