…何言ってんだか
さっぱりわかんない…
「…ベースなくしてますけど…」
『 ははっ 』
− 頭を反りかえらして
初めて笑った
「…幾つなんですか 年」
『 じゅーはち 』
…一個しか変わんないじゃん
「…バンド組んでどれくらいですか」
『俺が入ったのは……
一ヶ月とか…前だったっけ』
「 ?! 」
『赤池さんとかは…
皆、サラリーマンで
十年位音楽やってる』
「どうやって知り合うんですか
そんなの……」
『…ディスクオニオンで
『Azurite』試聴してたら
赤池さんが隣で泣いてた』
「ぷは」
人懐っこい
ちょっとふっくらした
メガネの笑顔が浮かんで来た
『…駅前でもらったティッシュ
あったから
渡して
これからバンドの練習で
スタジオ入るんだけど
ヴォーカルが、ベーシストと喧嘩して、居ないから
立ってるだけでいいって
連れてかれた』
「え。あのベーシストさん
喧嘩なんかするの?!」
『…穏やかそうに見えて
実は1番、気が荒いよ
あの人が他人にベース貸すとか
本来、有り得ないし』
「………」
それなのに貸してくれたんだ…
『うん』
− 聞く前に うん と言われてしまった…


