しばらくして
『彼』が
構内の 宝くじ売り場の横に移動して
しゃがみ込んだ
足の間に両手を入れて
だらんと下ろしてる
…別にこっちを呼ぶでもなく
左手で 軽くリズムを取り出した
独りで突っ立ってるのも
恥ずかしかったし
私も歩いて、
仕方なく、彼の横に立った
− 壁が冷たい
彼は小声で
『タイムマシーン』を歌っていた
男の人が歌うと
また全然感じが違う
「…それ 皆好きですね
さっき女の人も歌ってた」
『蘭さん』
…蘭さんて言うのか
『あんたの歌も
素直でよかったと思う』
「…普通ってことですね」
『うん』
……ムカつく…
『…蘭さんの所は
もう5年じゃない
バンド組んで
【もりそん】は…
ジャズっぽくやってた
森村さんの所は
もう30年』
「………」


