「そんな事よりさぁ。」



「ん~?」



「お前、あいつ覚えてるか?
橘 周平(タチバナ シュウヘイ)。」




兄の言った名前に一瞬頭を巡らせるも、一瞬で思い出す。




「覚えてるよ。お兄ちゃんの中学、高校の同級生でしょ?確か、あのイケメンだけど性格が残念で彼女が出来ないって言ってた人。」



「そうそう、その残念なイケメンの人。」



「よく学校の後、うちに遊びに来てたよね。
たまに私いじられたから、覚えてる。
その人がどうかした?」




私がそう聞いた時、玄関のチャイムがなった。



“よっこらしょ”のかけ声と共に立ち上がった兄が玄関へ出ていった。



どうせまたお母さんの頼んだダイエット器具の宅配でしょ?




私は気にせず、ソファーに寝転んだまま漫画を読んでいた。




すると、何やら玄関の方からリビングの方へ話し声が近づいてきた。





「お、チビ子がいる。」





ん?
何か聞き覚えのあるその呼び名…



振り向くと、そこにはやっぱり…



小学生だった私を“チビ子”と呼んでいた奴が一人いた。



それが…




「げっ…」



「久しぶりだな、チビ子。」





そう、数年見ない内に大人の男になっていた
“残念なイケメン”がいた。