「駄目ぇ、そこ、もう一回!」

あたしはソプラノパートの方を指差した。

「はぁ?意味分かんないし。あたし達が、悪いの?」

「駄目よ!全然駄目!全部ズレてる!ちょっとずつッ。」

「そうだな、半音ぐらいズレてる。」

先生はあたしの味方だ。

「さ、もう一度!」

そう言って、指揮の構えをする。
伴奏者とグランドピアノを見る。

『行くよ。』と、目で合図をする。