「わ!酷い…………」

しおちゃんは椅子にかけておいた上着を見つめる。
その上着は、足跡がついていた。
しかも、背中に。

「背中じゃ、自分で蹴れないよね。」

しおちゃんがボソリと言う。
そして、上着の汚れを払い落とす。

「駄目。全然消えない。」

確かに。
少しはましになったが、まだまだ跡が残っていた。
スカートのポケットからハンカチを取り出し、ゴシゴシと力強くこする。
やっと、消えた。
ハンカチは、濡れていた。
それが、理由である。