「家族割引なんてないんですけど。しかも名菜、焼きそば一つ丸ごと食えるのか?桃子ちゃんと半分ずつにしたら?」


「そうだよ、名菜ちゃん。そうしようよ」

「やだ。わたしは限界に挑戦します」


名菜は唇を尖らせて、鼻にくっつけた。多分癖だと思うんだけど、白目向いちゃってるし、ブサイクだからその顔はやめたほうがいいと思う。


「郁、お前疲れてないか?」

「疲れてるに決まってんじゃん。いきなり走り出すし、食べ物は残すしさ」

「まあ、頼むわ。祥平は役にたたないから」

「わかってるって。じゃあね」


多分うちの兄妹の中では、郁が一番最初に死ぬんだろうな。今のうちに素敵な人生送っとけよ。


遠くの方で澤口さんが友達と歩いているのが見えた。

俺らは一応付き合っているはずなんだけど、向こうが俺らの関係を周りには内緒にしてくれといったことで、こうして別々に行動している。